土壁の部屋にエアコンを取り付ける時の注意点や費用｜現役エアコン工事職人が解説

土壁とは？

土壁とは、土に藁や砂を混ぜて水で練ったものを塗り固めた壁のこと。小舞（竹や貫を縦横に組んだもの）を下地としています。

土壁はちょっとした振動や圧力で、劣化に伴いヒビが割れることがあり、土壁に直にエアコンのような重量物を取り付けると最悪の場合、エアコンの落下や壁の崩壊につながります。また、エアコン取り付け工事においても近代住宅へのエアコン設置以上に技術力が伴うため、職人にはある程度の技術や知識が求められます。

エアコンを取り付けるためにはこうする

強度上の問題があるため、基本的に土壁に直接（エアコンが接するような形で）エアコンを設置することはしません。一般的にはたて桟（さん）という金具を天井の廻縁（まわりぶち）や木の部分に固定し、その上にエアコンを設置する形をとります。たて桟以外にも、ツーバイフォー材などの木材で補強する業者もいます。

「土壁の下地の竹に長めのビスを打てば問題ないのでは？」と思う方もいるかもしれませんが、細い竹がどこに組まれているか表から判断できませんし、強度を出すためにビスを何本も打っては壁自体の強度が低下する可能性があります。見た目上、エアコン設置後にたて桟や補強材が見えてしまうことはありますが、これは仕方ないことです。もし、こだわりの新築住宅で見た目を気にされるのであれば建築段階でエアコン設置場所に下地（木材）を入れておくようにした方がいいと思います。

配管穴あけ時の注意点

エアコン設置する際には配管を出すための配管穴を壁にあける必要がありますが、土壁の場合には一般住宅の木材や石膏ボードに配管穴をあける時以上の慎重さが求められます。

というのも先にも書いたように、土壁自体には強度もなく、その下地の多くは小舞（竹などを組んだもの）です。簡単に言えば、表面は非常に脆く、中（竹）はめちゃくちゃ硬い壁なわけです。

通常、配管穴あけを行うときには「ホルソー（コアドリル）」を使用するのですが、土壁の場合はホルソーの刃が竹にひっかかることがあるので厄介です。誤った刃を使用したり、「竹が硬いから」と力づくで竹を切ろうとしてしまうと、最悪の場合、壁が崩壊する可能性があります。

また、土壁の中に電気が通っている電線が埋め込まれていることも稀にあります。

配管穴あけ方法

土壁の配管あけ方法は、①ホルソーで行う②手で行う（ホルソーを使わない）、この２パターンあります。ホルソーでやった方が綺麗な丸の穴を短時間であけられますが、壁の劣化が著しく、ホルソーの振動で崩れてきそうな場合には手で地道に穴あけすることもあります（ほぼありませんが、私は経験があります）。

ホルソーを使用するときは、次の手順で行います（私の場合）。

• ・土が飛び散るのでしっかり養生する。
• ・土壁内に電線が仕込まれている場合もあるので慎重に土部分を削る。
• ・竹が出てきたら力づくではなく、ホルソーの刃を当てる程度でゆっくり切る。
• ・中心を出して反対側から土部分を削る。

手で穴あけする場合は、なにを使ってもいいので土部分を削って、出てきた竹はペンチや引きまわし鋸で地道に切るという感じです。こちらの方法は少し大変ですが、壁の劣化がひどい（ヒビが多い）時やホルソーを使った作業に慣れていない場合に有効です。

費用

一般的な住宅への穴あけとは大きく違うので、土壁の配管穴あけ作業の費用は割増価格となることがほとんど。一般的には2000円〜5000円/ヵ所くらいかなと思います。

なお、土壁の穴あけ作業は引き受けない業者さんもいますので、工事依頼に時には必ず伝えるようにしましょう。